深谷市の深谷商業高校には国登録有形文化財として登録されているレトロな建築物があります。
それが「深谷商業高等学校記念館」、通称「二層楼(にそうろう)」。
ここは日曜日には一般公開されており、今回はこの大正期の趣のある校舎を見学してきました!
気になる内部の様子や見学の際の流れをお伝えします!
深谷商業高校記念館「二層楼」って?
深谷商業高校記念館「二層楼」は、深谷商業高校に今も残る旧校舎です。
大正11年竣工の木造校舎は、大正期の貴重な建物であるとして国の登録有形文化財として登録されています。
現在ではこの学校に関する資料が多く展示されていて、普段の生徒による利用は少ないようです。
ドラマのロケ地としてもたびたび利用され、今年(2023年)のNHK朝ドラ「らんまん」でも、当時の東京大学という設定で校舎が使われていました。
見学の際はどうすれば?
「二層楼」は毎週日曜日に一般見学可能です。
ですが、今も現役で運営されている学校。
普通に入って大丈夫なの?って思いますが、全然大丈夫でした!
ホームページなども説明が少なく、ちょっとわかりづらいんですが、ちゃんと「二層楼」には受付があって必要事項を記入することで中に入れます!
僕が行ったときの流れを説明しますね!
敷地に入って二層楼に向かう
というわけで、まずは敷地に入って、「二層楼」を目指しましょう。
国道17号側の正門からすぐに建物が見えますが、僕が行ったときは西門しか開いていなかったです。
西門はここから左側に回り込んで行くとあります。
見学者向けの案内板などは特にありませんでしたが、とりあえず門を入ったら右に進み二層楼へ向かいます。
西門側からの二層楼。
土台のレンガは渋沢栄一が設立に携わった日本煉瓦製造株式会社の上敷免製のレンガが使用されています。
松の木があります。この木は渋沢栄一の手によって植えられたものです。
渋沢栄一はこの校舎完成の際、講演に訪れたそうです。
庭も綺麗に整備されています。正面入り口までもう少し。
何も案内などが書いていませんが入り口が開け放してあったので「大丈夫だよな…?」と思いつつ入りました。
と思ったら中に案内板がありました。
いや外にわかるように置いといてくれよ…。
受付をする
靴を脱いで上がったら(スリッパが置いてあるので借りれます)、受付します。
この受付の窓も雰囲気がありますね。
で、この受付、無人でした。
またしても「大丈夫か…?」と思っていたら受付簿がありました。
こちらに記入をすればいいみたいです。
記入するのは、
- 日付と入館時間
- 氏名(団体名)
- 住所(市区町村まで)
- 性別と人数(備考欄に記入)
です。
備考欄は前の人に従って性別と人数を書きました。
人数を書くってことは氏名は代表者だけでいいのかもしれませんね。
まあ細かい記入のルールはそこまで気にしなくても人数がわかれば平気だと思います。
いよいよ館内へ!
受付簿への記入が終わればいよいよ館内へ!
パンフレットをもらって進みましょう!
さっそく受付のそばにある、開校当時使用されていた始業・終業の合図の鐘が目を引きます。
館内では順路などは特にありませんが、見学できる部屋が決まっているようです。
こちらの案内板を確認しておきましょう。
室内見学可能な部屋
- 展示室(渋沢栄一・歴史)(旧事務室)
- 応接室(旧校長室)
- 校史保存室(旧器械室)
- 商業史資料室(旧簿記教室)
- 展示コーナー
見学可能な部屋はドアが開け放してありましたので、迷うことはないと思います。
ただこの時は「商業史資料室」だけ開いてなかったです。
鍵はかかってなく、窓があるので室内は覗けましたが入室可能なのか謎でしたので(多分大丈夫だったと思いますが)、今回はその他の3室と展示コーナーを紹介します。
館内廊下と階段
やはり現役の学校の校舎とはイメージが違います。
当時は一般的だったのかもしれませんが、今入ってみるとフィクションの世界にいるかのよう。
もちろん修繕はされているとは思います。掃除も行き届いていて綺麗でした。
階段は特に絵になります。上からも下からも撮っちゃいました。
見学できる部屋も限られていますし30分もあればすぐ回りきってしまいますが、ゆっくりと時間をかけて館内を歩くのがおすすめです。
部屋に入る前に廊下を一回りしてみてもいいと思います。
大正ロマンの雰囲気を演出する照明にも注目!
2階の廊下には深谷市内で出土したらしい埴輪などがいくつか展示されていました。
それぞれに出土した場所が書かれていますが、深商の敷地内でもないので何故ここにあるのかは不明です。
深谷商業創設に携わった二人の偉人を称える「展示室」
それでは部屋に入っていきます!
まずは最も一般の方向けの展示といえる「展示室」。
ここでは深商の創設に携わった二人の偉人に関する資料が展示してあります。
渋沢栄一が残した二つの書
一人目はご存知渋沢栄一。立派な像が置いてあります。
実業家としてさまざまな企業の設立に関わった渋沢栄一ですが、福祉・教育などの事業にも積極的で、深谷商業高校(当時は「町立深谷商業学校」)の創設にも貢献していました。
そして完成したばかりの校舎に訪れた栄一は「士魂商才」「至誠」の書を残していきました。
ここでは額縁に入ったその貴重な書を拝むことができます。
しっかり「青淵書」と書いてありますね。(「青淵」は栄一の雅号)
この「士魂商才」「至誠」は深商の校訓にもなっています。
その他にも渋沢栄一関連の展示が多く飾ってあります。
各時代の栄一や関連人物(尾高惇忠、徳川慶喜など)の写真や、渡欧中の公開日誌などが壁にかかっていました。
新旧の栄一関連の書物が並んでいます。
特別ここでしか見られないものがあるって感じではありませんね。
やはり栄一像と本人による書がいちばんの見どころです。
渋沢栄一と志を同じくする深商創設の功労者・大谷藤豊
渋沢栄一と比べると知名度は低いですが、「大谷藤豊(おおたにふじとよ)」という人物に関する資料も展示されていました。
地元のお金持ちだった大谷藤豊は、深谷市に商業学校を設立することを強く望み、この二層楼の建設工事費の3分の1近くと敷地1万坪を寄付したのだそう。
すごい熱意を持って自分以外の人のために富を投じることのできる偉大な人だったんですね!
また、深谷市には「旧大谷邸」という、大谷藤豊の邸宅が残っています。
こちらも国登録有形文化財となっている建物ですが、現在もご家族の方が住んでいらっしゃるということで、邸内の写真は貴重です。
この邸宅は、昭和恐慌の際に多くの人に仕事を与え、お金を動かすための事業として建てられたもの。
多くの職人さんがこの事業に助けられたそうです。(「お助け普請」と呼ぶそうです)
この公益のために奔走する姿勢は渋沢栄一とも通ずる部分があります。
入り口側の一角だけではありますが、一緒に展示がされているのも納得の偉大な人物だと思いました。
大正レトロな雰囲気抜群の「応接室」
展示室の隣にあるのが「応接室」。
元校長室であるこの部屋は純粋に当時の建築や装飾を楽しめます。
いかにも偉い人が座っていそうな椅子と机!威厳がありますね。
偉い人側からの光景。
机上にはレトログッズが並びます。
年季の入った分度器や定規、羽ペンがいい味出してます。
タイプライター。
ハンドル式の電話機。
机や椅子から備品に至るまで全て大正期の雰囲気が残っていて、まるで映画やドラマのセットみたいに見えます。
奥に見える戸棚の扉は「商」の字を象ったデザインらしいです。
パンフレットには戸が開いている写真があったのですが、この日は開いていませんでした。
創立100年の歴史を語る「校史保存室」
校史保存室には深商にまつわる展示が多くありました。
資料としての書類から物品にいたるまで様々なものが展示してあるので、OBじゃなくても意外と楽しめます。
当時の商業学校設置のための書類。
前述の渋沢栄一や大谷藤豊をはじめとする多くの町民の寄付金と熱い思いでできた学校であることがわかります。
ショーケースには校誌やロケに使用されたドラマの資料などが並びます。
ドラマで使われたらしい小道具の看板が残ってる!
これは暴風雨で倒れてしまったという以前校庭にあったユーカリの木の一部。
記念樹として長く親しまれてきたので、保存しているそうです。
ここにもなんかレトロなアイテムが!
「万能メーター」と書いてありますが、これって何に使ってたんだろう?実験用?
展示コーナー
2階の廊下を歩くと展示コーナーが現れます。
二層楼の修繕工事の様子や、関連の新聞記事などが並んでいました。
窓際には大正期の大きくて立派な掛け時計があります。
令和2年発行のパンフレットには修理して動くようになった的なことが書かれていましたが、思いっきり止まってました 笑。(この写真の撮影時は14時4分)
この時計は精工舎(現在のSEIKO)製のもので、高さ170センチあるみたいです。デカい!
解説によると、「深谷茶話会」という地元経済人グループによる寄贈の品だそうです。
学校設立記念品って感じでしょうか。
ちなみに「深谷茶話会」の会長は大谷藤豊だそうで、時計の裏には彼をはじめとする40数名の名前が書かれているそうです。
見上げると天井がなく、屋根裏が見られます。
窓が見えます。塔屋と呼ばれる中央の出っ張りの部分にあたります。
外側は洋風なのに、内側は和の木造建築だとわかりますね。
二層楼と校庭のジオラマ。精巧な作りです。
おわりに
深谷商業高校記念館「二層楼」は、大正の雰囲気を残す貴重な建物です。
実際に中に入り、和洋折衷の建造物としての魅力やレトロな品々を目で見て楽しめました。
個人的にはよく知らなかった大谷藤豊をはじめとする多くの人の「深谷に商業学校をつくる」という熱意に感服しました。
特に深谷商業高校に思い入れがない方でも学びや楽しみがあるはずです。
無料で入れる施設ですので、日曜日に都合がつく方はぜひ訪れてみてください。
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